2023年04月03日 TAVI治療の質向上を追求した 経カテーテル心臓弁の新製品サピエン3 Ultra RESILIA生体弁を発売 TAV in TAVの適応承認も国内で初めて取得

日本法人プレスリリース

エドワーズライフサイエンス株式会社(東京都新宿区、代表取締役社長:サージ・パンチュク、以下エドワーズ)は、経カテーテル大動脈弁治療(TAVI)用の人工心臓弁の新製品「エドワーズ サピエン3 Ultra RESILIA(ウルトラ レジリア)生体弁」を発売しました。
既存製品であるサピエン3生体弁に、石灰化を抑制する独自の加工を施してさらなる耐久性を追求した「RESILIA心膜」を採用しました。また、弁周囲逆流(PVL)の発生リスクのさらなる低減を目指し、弁輪部への接着面積が増えるよう改良した「Ultraスカート」を採用しています。
また、万が一TAVI弁が正常に機能しなくなった際に、開胸手術をすることなく、新たなTAVI弁を追加で留置する治療法「TAV in TAV」の適応承認も日本で初めて取得しました。
今回のサピエン 3 Ultra RESILIA生体弁の発売、およびTAV in TAV適応承認取得により、TAVI治療の質の向上および将来の治療オプションの拡充の両立を実現し、大動脈弁狭窄症*の患者さんにより良い治療を提供することを目指します。
*「心臓弁膜症」の一種。心臓にある4つの弁のうちの大動脈弁に、動脈硬化と同じような現象が起きて弁尖が硬くなり、十分に開かなくなる病気。

左:サピエン 3 Ultra RESILIA生体弁の写真 右:カテーテルを用い、血管から大動脈弁の位置まで人工弁を運び、バルーンを膨らませて留置する様子

左:サピエン 3 Ultra RESILIA生体弁の写真 右:カテーテルを用い、血管から大動脈弁の位置まで人工弁を運び、バルーンを膨らませて留置する

●TAVI(タビ)とは
TAVIは、大動脈弁狭窄症に対する治療法のひとつで、開胸することなく、患者さんの血管からカテーテルで生体弁を心臓の中まで運び留置する治療法として、2013年にエドワーズが初めて日本に導入しました。これまで開胸手術が適さずに治療を受けることができなかった患者さんにとっての新たな治療選択肢として役立てられてきました。



●新製品サピエン 3 Ultra RESILIA生体弁の特長

1. さらなる耐久性を追求した「RESILIA心膜」と「ドライストレージ」
生体弁は、治療後に抗凝固薬の継続的な服用が必要ないため患者さんの負担を軽減できる一方、経年によって弁尖に体内のカルシウムが沈着して石灰化が起こり、再手術を必要とすることがあります。そこでエドワーズでは、弁尖へのカルシウムの結合を阻害するキャッピング処理によって石灰化を抑制する独自の技術を採用した「RESILIA心膜」を開発しました。
また、生体弁は柔軟性を保つために通常グルタルアルデヒド溶液に漬けて保存されていますが、この薬液も石灰化の一因と考えられているため、RESILIA心膜ではグリセリンを組織全体に浸透させる処理を施すことで、薬液不要の保存方法「ドライストレージ」を実現しました。
RESILIA心膜は、約20年もの歳月をかけて革新を重ねて開発された、エドワーズの技術革新の集大成です。さらなる弁尖の耐久性を追求したこの最新の技術は、すでにエドワーズの外科用生体弁、インスピリスRESILIA大動脈弁にも搭載されています。エドワーズはこうした弁尖の耐久性を向上させる革新的な取り組みを通じて再治療のリスクを低減し、患者さんの健康寿命とQOLに貢献します。

RESILIAの加工技術の説明の図


2. 弁周囲逆流(PVL)をさらに低減する新たなアウタースカート「Ultraスカート」
弁の留置後に弁の周囲から血流が漏れる弁周囲逆流(PVL)の発生リスク低減を目指し、生体弁下部のアウタースカートを従来のサピエン 3生体弁より約 40%高くし、さらにスカートの織り方を改良することで弁輪部への接着面積を広げた「Ultraスカート」を開発しました。これにより、米国のTVT Registry*のデータにおいて、サピエン 3生体弁よりもPVL発生リスクを低減したことが報告されています1
*米国胸部外科学会(STS)および米国心臓病学会(ACC)が主導する多施設参加の登録研究

アウタースカートの面積が40%増えた様子を示す写真

●カテーテルによる再治療を可能にする「TAV in TAV」
TAV in TAVとは、体内に留置したTAVI弁が経年劣化し、再治療が必要となった際に、新たなTAVI弁を追加で留置する治療法です。これまでは開胸手術をして、TAVI弁を外科的に摘出するしかなかったため、侵襲度が高いことが課題でしたが、TAV in TAVの適応承認取得により、カテーテルによる再治療が必要とされたときに、より低侵襲な選択肢を提供できるようになりました。

TAVI弁の中にTAVI弁を留置する様子を示した画像

●澤芳樹先生(大阪警察病院 院長/大阪大学大学院医学系研究科 特任教授)のコメント
RESILIA心膜は、米国では2017年から、日本では2018年から外科的生体弁に採用されており、私はいつかTAVI弁にも採用されるであろうと考えていました。外科的生体弁においては、大動脈弁置換術後5年のフォローアップデータで構造的弁劣化は0%と報告されている2ことから、TAVI弁においても同様の良好な成績が得られると期待しています。また、本邦で初めて海外レジストリデータを用いて取得されたTAV in TAVの適応承認は、今後再治療が必要な患者さんの福音となるでしょう。

●林田健太郎先生(慶應義塾大学医学部循環器内科 特任准教授 心臓カテーテル室主任)のコメント
患者さんにとって、一度の治療で長く元気に過ごせることは最も望ましいことです。長期耐久性を追求したRESILIA心膜、そして予後不良因子となりうるPVLのさらなる低減を目指したUltraスカートを採用したサピエン 3 Ultra RESILIA生体弁は、患者さんにより良い大動脈弁狭窄症治療を提供することに寄与すると考えます。日本には治療を必要とする患者さんがまだ多くいらっしゃいますので、一人でも多くの患者さんに最適な治療を届けていきたいと思います。

●当社代表取締役社長サージ・パンチュクのコメント
今年は、エドワーズの経カテーテル生体弁「サピエン」で、日本の大動脈弁狭窄症の患者さんをサポートし続けて10年の節目となります。この特別な年に、新しい生体弁サピエン 3 Ultra RESILIA生体弁を日本で発売できることをとても嬉しく思います。私たちは、患者さんを助けたいという情熱を原動力に、心臓弁膜症治療製品のパイオニアとして技術開発に取り組み続けることを使命としています。これからも、構造的心疾患と戦う患者さんのために、治療の効果がより長く続く製品、さらに、治療後の生活の質も見据えた製品の創出に力を尽くして参ります。


●心臓弁膜症について
心臓弁膜症は心臓の弁に障害が起き、本来の機能を果たせなくなる状態です。日本には65~74歳で約150万人、75歳以上で約235万人の潜在患者がいると推測3,4されます。重症な場合、悪くなった弁を人工弁に置き換える治療が選択されます。治療せずに放置することで、心不全に至るおそれがあり、早期に病気を発見し、適切なタイミングで治療することが重要です。心臓弁膜症サイトでは、心臓弁膜症についての解説や、見逃されがちな症状、詳しい検査・治療方法などをご紹介しています。
▶心臓弁膜症サイト https://www.benmakusho.jp/

■サピエン3 Ultra RESILIA
販売名:エドワーズ サピエン3
承認番号:22800BZX00094000

【参考】
1. Nazif TM, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2021;14:e010543.
2. Bavaria JE, et al. Ann Thorac Surg. 2022 Jan 20;S0003-4975(22)00063-7. doi: 10.1016/j.athoracsur.2021.12.058.
3. De Sciscio P, et al. Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2017;10:e003287.
4. 総務省統計局. 人口推計の結果の概要 令和2年4月報(令和元年11月確定値). Available from: https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202004.pdf(アクセス日:2022年4月26日)